はじめに
先日の夢特性御三家解禁に伴い、対戦環境が一変しました。その主たる原因は、特性「リベロ」のエースバーンエースバーンにあるといえます。高いASから繰り出される問答無用のタイプ一致技、加えてダイマックスとの相性の良さ(特にダイナックルとダイジェット)がこのポケモンの強みといえます。この猛攻を受け切ることができるポケモンは限られていて、候補に挙がっているものは
ドヒドイデドヒドイデ、カバルドンカバルドン、ギャラドスギャラドス、「てんねん」ヌオーヌオー
「じきゅうりょく」バンバドロバンバドロ、「ふしぎなうろこ」ミロカロスミロカロス
「きあいのタスキ」コオリッポコオリッポ(アイス)、「しんかのきせき」サニーゴ(ガラル)サニーゴ(ガラル)
ウォッシュロトムウォッシュロトム、その他ドラパルトドラパルトガオガエンガオガエンの並びなど
があると思います。エースバーンエースバーン対策に追われて、全てのパーティにこれらのポケモンが採用されているかというとそうではありませんが、DLC解禁後の環境においてもエースバーンエースバーンの無双は続くと考えられ、キョダイマックスエースバーンも解禁された今、対策ポケモンの採用率が今後も増えていくと予想されます。
さて、話が変わりますが2世代前の対戦環境において、エースバーンエースバーンと同じように猛威を振るっていたポケモンがいました。それが、メガガルーラメガガルーラです。ナーフ前の特性「おやこあい」は攻撃技を1.5回で撃つことができ、「グロウパンチ」と「すてみタックル」を合わせて受け切ることが困難とされ、使用率の頂点に立ってきた過去がありました。この厳しい条件下でも、メガガルーラメガガルーラの対策として考案されたのがクレセリアクレセリアや「しんかのきせき」ポリゴン2ポリゴン2などのBが堅いポケモンや、「おにび」ゲンガーゲンガーなどの補助技持ちのゴーストタイプでした。そこで、メガガルーラメガガルーラに対して受けに出てくるポケモンの共通点に着目して次のような非常に面白い戦術が考案されました。
育成論ORAS・XY/576
この戦術の概要は、ガルーラガルーラに化けたゾロアークゾロアークが、受けに出されたクレセリアなどを前に「わるだくみ」を積み崩していくものです。崩した後、今度はメガガルーラメガガルーラが通る、そういった要領になっています。この戦術は非常に高度な選択を要求し、相手にするとかなり厄介です。無論、この戦術がどのランク帯まで有効になるかは一切不明ですが、ゾロアークゾロアークの固有特性「イリュージョン」をこれ以上ないほどに活用した戦術であると考えています。
残念ながら(幸いにも)、今作ではメガシンカの要素が撤廃されこの戦術がもう使用されることがないと考えられてきました。しかし、エースバーンエースバーンが呼ぶポケモンに着目すると、
- D方面に脆さを抱えている
- 低速である
- あく、くさタイプの通りが非常に良い
という共通点が浮かび上がってきます。
以上の点に注目して、この育成論では並びとしてのエースバーンエースバーンとゾロアークゾロアークのシナジーについて考察していきたいと思います。エースバーンエースバーンが呼ぶ相手に交代する1ターンの隙を突いて、ゾロアークゾロアークで「わるだくみ」を積み、受けを崩すことを目的とします。合わせて、他のウサギたち(ホルードホルードやマリルリマリルリ)とも同様の戦術が成立するか、考察をします。
ゾロアークゾロアークについて
ゾロアークゾロアークは固有特性「イリュージョン」を持つ高いCとSを併せ持つ低耐久アタッカーです。
種族値 : H60 A105 B60 C120 D60 S105
ゾロアークゾロアークの最大の強みはその特性「イリュージョン」にあるといえその性質上、強みを最大限に引き出すためには「誰と組ませるか」が最大のポイントになります。高いAを併せた両刀アタッカーや低いBを生かした「カウンター」奇襲などがこれまで考案されてきました。中でも、猛烈な物理アタッカーと組ませる特殊積みエース型について本育成論では注目しました。
特性と持ち物
イリュージョン
手持ちの最後のポケモンの姿と名前で戦闘に出る。『タイプ:ヌル』や能力に変化はない。ダメージを受けると元に戻る。
きあいのタスキ
持たせると、HPが最大の時、『ひんし』状態になるダメージや一撃必殺の技を受けても必ず1残る。ただし、1度使用するとなくなる。
特性は一つしかないために「イリュージョン」で確定です。選出の段階で、3体目に選んだポケモンに化けるため、特性を生かすのであれば必ず1体目もしくは2体目に選出しましょう。また持ち物は暫定的に「きあいのタスキ」にしましたが、「カウンター」を採用をしない場合は他の持ち物(「いのちのたま」や「たつじんのおび」など)も候補になります。
性格・努力値と調整
性格はおくびょうを採用します。
努力値配分は、
努力値 : C252 D4 S252
です。
仮想敵は低速が中心ですが、受けを崩した後もなるべく行動回数を確保したいので最速が推奨です。必要に応じて最速100族抜きまで落としても良い場合があると思います。
技構成と与ダメージ計算
ここでは、高火力物理アタッカー(3大ウサギ)のエースバーンエースバーンとホルードホルード、マリルリマリルリが呼ぶであろう受けポケモンに対して有効な攻撃技とその与ダメージ計算を行います。
エースバーンエースバーンとホルードホルードとマリルリマリルリ、それぞれが呼ぶポケモンについて以下のマーカーをつけます。
わるだくみ[★★★★★]
あく変化 威力-
自分の『とくこう』ランクを2段階上げる。
本先述の要ともいえる積み技です。いくらCの高い特殊アタッカーといえど、高耐久ポケモンを崩せるほどではないのでこの技を採用します。Cを2段階上げることができれば後述のポケモンに対して致命的なダメージを与え崩すことができます。加えて、あくタイプの攻撃範囲の広さによって積んだ後に等倍で倒せる範囲を拡大できます。ダイウォールとして撃つこともできる、メリットが多いため確定技とします。
ナイトバースト[★★★★★]
あく特殊 威力85
40%の確率で相手の命中率を1段階下げる。
こちらは準固有技です。エースバーンエースバーンとホルードホルードとマリルリマリルリが呼ぶ高耐久ゴースト(「しんかのきせき」サニーゴ(ガラル)サニーゴ(ガラル)など)に刺さります。また範囲も広いため確定技としました。ただし命中不安であるため、追加効果と命中で差別化できる「あくのはどう」と入れ替えが一応できます。
与ダメージ計算
H167-D120(H252)「しんかのきせき」サニーゴ(ガラル)サニーゴ(ガラル)【A】【H】【M】
55.0%~65.8%(「わるだくみ」で確定1発)
H202-D120(H252)ギャラドスギャラドス【A】【H】【M】
34.1%~40.5%(「わるだくみ」込みでも確定2発)
H195-D95(H252)ドラパルトドラパルト【A】【H】
89.2%~105.6%(H174までなら確定1発)
H181-D136(H252)ナットレイナットレイ【H】【M】
33.7%~40.3%(「わるだくみ」2積みで確定1、どうしても重い場合は「かえんほうしゃ」を採用)
くさむすび[★★★★★]
くさ特殊 威力体重依存
相手の『おもさ』が重いほど威力が高くなる。10kg未満は20、25kg未満は40、50kg未満は60、100kg未満は80、200kg未満は100、それ以上は120。ダイマックスしている相手には無効。
こちらも確定技です。呼ぶカバルドンカバルドンやヌオーヌオーなどのじめんタイプに対してかなり強くなります。
与ダメージ計算
H215-D124(H252D252)カバルドンカバルドン【A】【H】
58.6%~69.7%(「わるだくみ」で確定1発)
H207-D105(H252)バンバドロバンバドロ【A】【H】
71.4%~85.0%(「わるだくみ」でHD特化でも確定1発)
H202-D128(H252D↑252)「てんねん」ヌオーヌオー【A】【H】【M】
81.1%~97.0%(確定2発、わるだくみC上昇無効、ダイソウゲンで確定1発)
H157-D127(H252)ウォッシュロトムウォッシュロトム【A】【H】【M】
14.0%~16.5%(体重が軽いため、ダイソウゲンで超低乱数1発85.3%~100.6%、わるだくみで確定)
H207-D100(H252)マリルリマリルリ【A】
37.6%~45.4%(わるだくみダイソウゲンで確定1発)
じんつうりき[★★★☆☆]
エスパー特殊 威力80
10%の確率で相手をひるませる。
こちらはかなり優先度が落ちますが、エースバーンエースバーンが呼ぶドヒドイデドヒドイデ対策ピンポイントの採用です。あく技で攻めても良いですが、「くろいきり」を持っていると積んだ分が無効になるため、エスパー技が必要だと思い採用しました。この先、マリルリマリルリの解禁に伴いドヒドイデドヒドイデの採用率は増えていくと踏んでいて、「じんつうりき」の優先度も高くなると考えています。
与ダメージ計算
H157-D213(H252D↑252)ドヒドイデドヒドイデ【A】【M】
31.8%~38.2%(「わるだくみ」ダイサイコで確定1発)
H310-D95(無振り)ダイマックスエースバーンエースバーン(かくとうタイプ)
35.4%~41.9%(「きあいのタスキ」で耐えて「わるだくみ」ダイサイコで確定1発)
- その他の選択技
かえんほうしゃ[★★☆☆☆]
ほのお特殊 威力90
10%の確率で相手を『やけど』状態にする。
カウンター[★★★☆☆]
かくとう物理 威力ダメージ依存
相手の物理攻撃のダメージの2倍をその相手に与える。『ダブルバトル』の時は最後に受けた技のみ有効になる。必ず後攻になる(優先度:-5)。『ゴースト』タイプには無効だが、それ以外のタイプ相性の影響を受けない。
役割破壊したい場合に採用します。相手のエースバーンエースバーンと対峙したとしても強引に持っていけると考えると採用の優先度は高まる可能性があります。
ヘドロばくだん[★★☆☆☆]
どく変化 威力90
30%の確率で相手を『どく』状態にする。
対フェアリー打点として。「じんつうりき」との選択です。
おきみやげ[★☆☆☆☆]
あく変化 威力-
自分が『ひんし』になる代わりに、相手の『こうげき』『とくこう』ランクを2段階ずつ下げる。
暴れた後の起点作りとして。次に述べる型は本育成論のものと全く異なると思いますが、一応「トリック」を覚えるのでこだわりアイテムを押し付けてそのあと「おきみやげ」を撃つことで後続エースバーンエースバーンなどの起点を作ることができます。
きあいだま[★☆☆☆☆]
かくとう特殊 威力120
10%の確率で相手の『とくぼう』ランクを1段階下げる。
ほぼガオガエンガオガエンピンポイント対策の採用技です。「いかく」でターン枯らしを狙ってくる立ち回りに対して有効打があれば便利ではありますが、命中不安でもあるので採用優先度は低いです。
さいごに
ゾロアークゾロアークとエースバーンエースバーンの並びの魅力について伝えることができたと思います。特に、カンガルー(ガルーラガルーラ)やウサギ(エースバーンエースバーン、ホルードホルード、マリルリマリルリ)のように、「よく跳ねるいきもの」とばかり相性が良いことは果たして偶然なのでしょうか。とにかく、固有特性「イリュージョン」は対戦に奥行を与え、よりスリリングなバトルにすることができるので、これまで使ってこなかった人にも触っていただけたらと思います。
以上、長文になりましたが読んで下さりありがとうございます。
コメント欄での指摘や活発な議論を歓迎します。どうぞよろしくお願いします。