はじめに
どうもこんにちわ。むちころ犬と申します。
早いもので、育成論初投稿から約2ヶ月。これで8回目の投稿となりました。
今回ご紹介させて頂くのは、9月10日現在、何故か未だに本サイト内でひとつも剣盾環境での考察がないビリジオンです。
個人的にビジュアルは三闘の中では一番好みなんですけどね…
なかなかピーキーな性能をしているので扱いが難しい上級者向けのポケモンかもしれませんが、出来る限り分かりやすく考察させて頂きますので、よろしくお願いします。
ビリジオンの特徴
今期唯一の草/闘の組み合わせを持つポケモンです。
準伝説だけありスペック自体は高く、合計種族値は580と600属に迫り、取り分け129あるDと108のSが目を引きます。他の能力も全体的にハイバランスで纏まっていますが、AとCが共に90とアタッカー基準では相対的に低めである事から、火力による純粋なダメージソースとしてはやや使いにくい印象です。
剣盾でのビリジオンの境遇
キノガッサやブリガロンがいなくなり、タイプ的に確固たるアイデンティティがあるにも関わらず、ビリジオンの剣盾での境遇は決していいものではありません。
理由は主に3つです。
習得技のアンチシナジー
前述したアタッカーとして低めなAとCを持ちながらも、習得技に搦め手が殆どなく、どうしてもアタッカー運用をせざるを得ないのがビリジオンがマイナーである最たる理由です。
それだけならまだ「つるぎのまい」等で火力を補強すれば活路はありますが、「草/闘」の組み合わせは飛行タイプの技に対して致命的に弱く、何処から「ダイジェット」が飛んでくるか分からない昨今の環境から、積みにターンを割くリスクが他の積みアタッカーに比べて格段に高くなります。
物理偏重な環境
前述したように、ビリジオンは高いDと無振りでもそこそこあるHを持ちますが、剣盾環境はシーズン1から現在まで物理アタッカーを中心に環境が構築されています。前述のダイジェッター達の氾濫とも合わせると、そもそも耐久方面の種族値を活かせる場が少なかった事も、このポケモンがマイナーであった理由です。
強力な格闘枠の存在
これはビリジオンのみならず、三闘を始めほとんどの格闘タイプに当てはまりますが、鎧の孤島より追加されたウーラオス(いちげき)が、「格闘タイプのアタッカー需要」をほぼ独占してしまっている現状が、ただでさえ少ないビリジオンの需要を更に低迷させています。(元から需要がないとか言わない)
ビリジオンを「愛」ではなく、きちんとした「戦力」として活用したい場合、これらの障害を全てクリアする強い独自性が必要となります。
ビリジオンの強みと独自性
一通り弱味を見たところで、次はビリジオン固有の強みから差別化に足る要素を見ていきましょう。
1、「草/闘」が攻撃面でシリーズ6環境上位に刺さっている
著者が今回ビリジオンを考察しようと考えた切っ掛けです。
この2タイプだけでアシレーヌマリルリウーラオス(いちげき)(一撃、連撃)ポリゴンZナットレイドサイドンホルードカビゴンサザンドララプラスウォッシュロトムガマゲロゲトリトドンヒヒダルマ(ガラル)等、採用率TOP30に限っても約半数のポケモンに弱点がつけます。特に選出画面では型の判別が出来ないウーラオス(いちげき)を両方ともカバー出来る点は特筆に値します。
2、サイクル適正の高さと、それを生かす「だっしゅつパック」との相性の良さ
半減タイプ6つ、かつ無振りで特化FCロトムに比肩する特殊耐久と高めのSを持つビリジオンは、本来居座るよりもサイクル戦の適正の方が断然高いポケモンであると言えます。
加えて自身の能力低下を誘発する「インファイト」と「リーフストーム」の両方を一致で扱えるため、それらを一度だけ「とんぼがえり」のように使える「だっしゅつパック」とは極めて高いシナジーがあります。
1、で書いたように、現環境は「草/闘」で弱点を突けるポケモンの採用率が高いため、それらに対して後出し→有効打となる方の技を選択→「だっしゅつパック」で交代の流れから、比較的簡単に有利サイクルの継続が可能です。
多弱点ですが高めのSが幸いし、例えばアシレーヌやマリルリ等、こちら側も相手から弱点を突かれるような場面でも、迷わず「リーフストーム」を選択出来るのもビリジオンの明確な利点です。
『環境的に抜群範囲が広い2種類の交代技を臨機応変に使える』
今回はこの点を生かした「有利サイクルの継続を目的とした、環境メタのクッション兼両刀アタッカー」としてのビリジオンを考察します。
…役割名が長い
採用理由と役割
前述したようにシリーズ6の環境メタとして。
タイプ耐性や特殊耐久を生かした後出しから有利サイクルを継続する『潤滑油』としての採用となります。
2種類の一致交代技という事で、近い動きとしては同持ち物のカットロトムやジャラランガ等も可能ですが、役割対象の違いや、激戦区を越えるS、特殊耐久値によって差別化が可能です。
逆にこの中では最も火力に恵まれないため、不特定多数に圧力を掛けるといった動きは向いていません。
持ち物
だっしゅつパック
自身の能力が下がった時に控えのポケモンと入れ替わる事が出来ます。ビリジオンの場合、「インファイト」と「リーフストーム」の二種類の中から、対面相手に有効になる方をチョイス出来るのが強みです。
「いかく」持ちに遭遇すると戦術が崩れますが、シリーズ6ではギャラドスとガオガエンが使用禁止、ウインディもエースバーンが禁止になったため採用率を落としている事から、出落ちする心配は減りました。
特性
せいぎのこころ
『悪』タイプに対する牽制となります。
隠れ特性はないため、現状はこれで確定です。
特性発動時にAが一段階上がりますが、撃ち逃げが基本となる本考察ではアンチシナジーになります。
性格・努力値と調整
せっかち
AもCもS使う以上耐久面を削るしかありません。個性であるDはなるべく生かしたいので、断腸の思いでBを削ります。
A252orC252
S196
B62
種族値の関係上、AとCは「どちらかを立てればどちらかが立たず」になります。中途半端に振ると「どちらも立たない」となりかねないため、AかCで優先する方に振り切る事を推奨します。
具体的にはA252で無振りサザンドラが、C252でH振りマリルリやH振りウォッシュロトムがそれぞれ弱点をついて確定1発になります。
A252でウーラオス(いちげき)一撃が「インファイト」で中乱数1 、特化ナットレイが「たべのこし」込み確定2発となるため、役割対象に4倍弱点持ちが多く、無振りでも比較的圧力が掛かる「草(C)」よりかは、どちらかといえば「闘(A)」に振り切った方が、連発が利く「インファイト」やサブウェポンも含めて活躍の場は増やせるかと思いますので、本論では基本的にA252を前提とします。
Sは最低でもサザンドラ(とついでに100族)を抜くためため実数値で168(努力値で196)は必要です。余った努力値62の使い道は2択で、削った耐久を補強するためにBに振るか、そのままSに振りきってしまうかです。
この論では役割対象を環境上位に絞り、物理に対して少しでも安定して耐性受けを狙えるようにbを補強します。
技構成
確定技
インファイトorばかぢから
主力技1
火力の低いビリジオンですが、弱点をつければ無振りサザンドラに確定1発を取れるレベルはあります。使用後すぐ交代となるため、1サイクル目は耐久ダウンをさらす心配はありません。
基本的には連発の利く「インファイト」ですが、「リーフストーム」も使えるため、どうしても特殊耐久を削りたくない場合は「ばかぢから」もアリです
リーフストーム
主力技2
Cが無振りでも、メジャーなD振りHRドサイドンが余裕で確定1発になります。
「じゃくてんほけん」型にダイマックスを切られても、先制エスケープからクッションを挟み、死に出しから再度「リーフストーム」を打つ事で被害を最小限に抑える事が出来ます。同様の立ち回りはドサイドン以外にも応用可能です。
優先技
ストーンエッジ
後出しされやすく、環境で採用率の高いリザードンやウルガモスヒートロトムに対しての有効打となります。
無振りDMリザードンに対しビリジオンのダイロックが約55%の中乱数、すなあらしのダメージも含めると対面でも相討ち以上に持っていける可能性がそこそこ高く、1サイクル目の後出し時の「リーフストーム」や「インファイト」の被弾など、サイクルの中で相手が僅かにでも削れると、先制「ダイロック」が確定圏内に入ります。
選択技
リフレクター ひかりのかべ
シングルでのビリジオンの数少ない汎用的な味方サポート技です。
有利対面時に「インファイト」や「リーフストーム」以外の選択肢を持つ事が出来ます。
高めのSを利用して、先制で壁を貼ってダメージを軽減、次のターンに上記の技を使って交代という動きも強力です。
後出しされやすい物理を意識する「リフレクター」か、リザードンヒートロトムに有効な「ひかりのかべ」か、自分のパーティにあった方を選択して下さい。
ちょうはつ
高いSによって先制で撃てる場面はおおいです。
火力の低いビリジオンが積みの起点にされるのを防げると共に、逆に此方の積みアタッカーの起点をつくる事が可能になります。
立ち回り例
立ち回り自体は従来のFCロトムと似ています。
耐性を利用して、相手の水、草、悪、地、岩、電技に対する受け出しを狙います。対特殊に関しては{ポリゴンZ等}等倍でも強引に後出し出来る耐久力があります。
一度場に出た=有利対面を取れたら、1サイクル目は目の前の相手に有効な技を選べば基本的にOKです。
1、相手が交代すれば、それを確認後有利サイクルの維持へ。
2、居座れば、強い負荷を掛けつつ交代。対ナットレイなどで仮に相手を倒しきれなくても、この場合相手の繰り出す技の目星をある程度つける事が出来るはずです。(不利対面であえて居座る以上、この場合「でんじは」や「ステルスロック」を選択している可能性が非常に高い等)
2サイクル目以降、「だっしゅつパック」を消費している時は、高いSを利用した壁張りや、相手の僅かに残ったHPを削りきるなど、状況に応じて立ち回って下さい。
与ダメージ計算
比較的環境で見受けられ、ビリジオンが役割を持てそうな相手に絞ります(小数点以下は四捨五入)
インファイト
無振りサザンドラ…105%〜126%
無振りウーラオス(いちげき)一撃…93%〜110%
無振りホルード…125%〜147%
無振りマンムー…104%〜123%
無振りポリゴンZ…135%〜159%
無振りラプラス…94%〜111%
無振りヒヒダルマ(ガラル)…141%〜169%
B252カビゴン…65%〜77%
B252ハピナス…93%〜111%
特化ブラッキー…55%〜65%
特化ナットレイ…54%〜64%
リーフストーム
無振りウーラオス(いちげき)…117%〜137%
D振りHRドサイドン…120〜142%
特化トリトドン…101%〜121%
H振りガマゲロゲ…164%〜193%
H振りアシレーヌ…64%〜77%
H振りウォッシュロトム…82%〜97%
H振りマリルリ…78%〜93%
H振りミロカロス…56%〜66%
H振りバンバドロ…73%〜88%
ストーンエッジ(ダイロック)
無振りリザードン…144%〜170%(186%〜219%)
無振りウルガモス…158%〜187%(205%〜242%)
H252ヒートロトム…55%〜65%(70%〜82%)
被ダメージ計算
物理方面
A252ウーラオス(いちげき)
あんこくきょうだ…42%〜49%
すいりゅうれんだ…40%〜48%
インファイト…82%〜98%
Bを補強しておくと、対物理で大体このレベルまでは耐性を利用して安定した受け出しが可能です。
A252ちからもちホルード
じしん…40%〜48%
ワイルドボルト…25%〜29%
ギガインパクト…122%〜144%
特化ドサイドン
じしん…40%〜47%
ロックブラスト…9.6%〜12%(一発あたり)
特化ナットレイ@こだわりハチマキ
パワーウィップ…54%〜64%
ジャイロボール(150)…136%〜160%
特化ちからもちマリルリ
たきのぼり…34%〜40%
アクアジェット…17%〜20%
ばかぢから…68%〜80%
特化カビゴン
じしん…22%〜26%
のしかかり…57%〜67%
特殊方面
C252てきおうりょくポリゴンZ
はかいこうせん…85%〜101%
れいとうビーム…51%〜61%
ほうでん…11%〜13%
流石の特殊耐久です。特殊超火力の代名詞であるポリゴンZでこのダメージなので、対特殊に関しては多少強引な後出しも可能です。
特化アシレーヌ
うたかたのアリア…20%〜24%
ハイドロポンプ…25%〜29%
ムーンフォース…84%〜101%
特化DMガマゲロゲ@命の珠
ダイストリーム(ハイドロポンプ)…28%〜33%
ダイアース(だいちのちから)…26%〜31%
ダイアシッド(ヘドロウェーブ)…51%〜60%
特化FCロトム
10まんボルト…18%〜21%
ハイドロポンプ…22%〜25%
オーバーヒート…102%〜123%
C252サザンドラ@命の珠
りゅうせいぐん…68%〜81%
あくのはどう…21%〜25%
だいもんじ…78%〜92%
耐性、種族値を生かした後出しダメージの目安は、だいたいこのようになります。
相性の良い味方
ドサイドンドサイドン
ビリジオンで対策出来ず、「リーフストーム」に後出しされやすいパッチラゴンに帯する解答として優秀です。D方面に厚いビリジオンに対し、ドサイドンはB方面に厚く、補完面で見ても、ドサイドンの苦手な草、水、地面をビリジオンが半減、ビリジオンの苦手な毒、飛行、炎をドサイドンが半減してくれるため、バランスの取れた頼れる相棒となりますが、「こおり」の一貫には注意して下さい。
ヒートロトムヒートロトム@拘りスカーフ
「ボルトチェンジ」の搭載によって、有利サイクルの維持に長けた組み合わせになります。上記のドサイドンとの組み合わせも良く、三者の防御面での補完はそこそこ優秀といった具合ですが、「霊」や「竜」が減った事で、環境に突き刺さる一致攻撃範囲が魅力の「攻め」の並びとなります。ビリジオンを上手く使ってアシレーヌやマリルリ、ウーラオス(いちげき)を突破出きるかが鍵となります。
このドサイドンビリジオンヒートロトムの並びは、守りの観点からプレイング難度は高いのですが、半減受けを上手く利用すれば環境に存在するほぼ全てのポケモンを相手取れるため、サイクル戦やプレイングを学ぶという意味では、個人的に初心者の方に是非とも使って頂きたい編成です。(ドサイドンの持ち物は比較的自由ですが、アイアントに一貫を取らせないためにヒートロトムのスカーフはぼ固定です)
パッチラゴンパッチラゴン
シリーズ6のトップメタです。
現環境はこのポケモンを中心として成り立っているため、同一パーティ内にパッチラゴンを入れておくだけでも、ビリジオンの役割対象がポンポン選出されるようになります。
相方としては上記のポケモン達と同じく防御面の補完はそこそこですが、攻撃面では非常に優れた並びとなります。等倍受けを許さない「電/竜」の超火力とそれを補う「草/闘」によって、上手く回せれば、ほぼこの二匹だけでスカーフヒヒダルマ以外の環境上位ポケモンを軒並み粉砕出来るポテンシャルがあります。
このポケモンの注意点
種族値やタイプ的にパッチラゴンやギルガルド(シールド)はどうやっても対面から打ち勝てません。タイプ不一致であっても飛行技を受けると即死しかねないため、意外な相手に落とされる場面もあるかもしれません。
それとはまた別に、この型のビリジオンを扱う上で気を付けて頂きたい点を記載します。
以前オンバーン@だっしゅつパックを考察した時にも触れましたが、パーティの『潤滑油』であるこのポケモンに、アタッカーや受けといった特定の役割を過剰に求めてはいけません。
ビリジオンに関しては相手の弱点を突くことでようやく一端の火力が見込めるポケモンである事はしっかりと意識して下さい。
等倍で『受け』や『重戦車型』のポケモンと撃ち合える力はこの型にはありません。
同時選出するポケモンはタイプの補完面も含め、しっかりとしたポテンシャルの高いポケモン(所謂廚ポケ)から選ぶ事を強く推奨します。
このポケモンはエースではなく『サイクル戦の潤滑油』=『交換戦の中で味方を引き立てるためのポケモン』ですから、その味方がそもそも低スペックである場合、有利対面を作っても『撃ち合いの中でナチュラルに巻き返されて、気付けば負けていた』なんて試合が頻発します。
ビリジオンの強さは味方の強さに依存するという事をくれぐれも忘れないで下さい。
おわりに
いかがだったでしょうか。
これだけ準伝説が少ない環境で、解禁から3ヶ月間育成論が上がらないレベルで不遇だったビリジオンですが、しっかりと活躍の場はあるという事が伝われば幸いです。